要点
- 基本的にすべてのプレイでプレイアクションを行う。
- パス中心のオフェンスと考えられがちだが、ランとパスの比率はおおよそ5対5。
- パスを効果的にするためにボールを持って走る優秀なラッシャーが必要。
解説
「ウェストコースト・オフェンス」はプレイアクションによってディフェンスの動きを止めて短いヤードを確実に獲得していく攻撃理論である。
49ナースの監督を務めたビル・ウォルシュが考案者とされ、球団が西海岸のサンフランシスコを本拠地としていたことからこの名がついた。
プレイアクション
「プレイアクション」とはクォーターバック(QB)が直接センターからボールを手渡しで受け取り(エクスチェンジ)、
ディフェンスに背を向けて後ろに下がりながら、ランニングバック(RB)にボールを手渡す、または渡すふりをする動きである。
ディフェンスはこの動きをされると相手がランでくるのか、パスでくるのか分からないので、
極端な動きが出来なくなる。攻撃側はその間にレシーバーを予定の位置に送り込み、
QBがフリーな選手にパスを決める。
ディフェンスの足を止めていられる時間は短いので、ショートパスを多用するのがこのオフェンスの特徴である。
ショットガン折衷型
「ウェストコースト・オフェンス」はすべてのプレイでプレイアクションを行うのが基本形であったが、
ブロンコスがQBジョン・エルウェイのパス能力を生かすために「ショットガン・オフェンス」と組み合わせた「折衷型」のウェストコースト・オフェンスを完成させ、
1998年にスーパーボウルを制覇したことから、派生形が普及した。
現在、ウェストコースト・オフェンスを採用しているチームのほぼすべてが何らかの形で
「ショットガン」を取り入れており、この折衷型が主流となっている。
QBラン型
「ウェストコースト・オフェンス」の派生形として走力を持つクォーターバックがパスを投げずに走るスタイルがある。
49ナースのQBスティーヴ・ヤングが得意とした形で、運動能力を持ったクォーターバックがいるチームはこの形を採用することが多い。
プレイに幅が出来るため、守備が難しくなる。
ただし、オフェンスの中核であるクォーターバックがハードヒットされて負傷することが多く、危険性の高いシステムである。
対抗策
1980年代から 90年前半にかけて「ウェストコースト・オフェンス」は絶頂期を迎え、無敵とされたが、
ディフェンス側も対抗策を打ち出し、2001年ごろから「ウェストコースト・オフェンスでは勝たない時代」に突入した。
パッカーズで守備コーディネーターを務めていた故フリッツ・シャーマーは「ウェストコースト・オフェンス」に対抗するディフェンスの第一人者とされ、
バックス陣の動きを高度に組織化して周到なブリッツや厳しいマンツーマンでパスを阻止する頭脳的なシステムを完成させた。
その後、シャーマーのディフェンス論理は各チームに広く取りいれられ、
さらなるディフェンスの進化が続いている。