快晴に恵まれた第32回スーパーボウル。
1998年 1月 25日 -- 今年は歴史の1ページを塗り替えるともいえる興奮と感動のすばらしい一戦と
なった。
AFC最大の不名誉であったスーパーボウル 13連敗がこの試合によってつい
に破られた。
デンバーブロンコスがチーム創設以来 38年目にして初のスーパーボウル優勝
を飾り、37才のQBエルウェイはスーパーボウル4度目の挑戦でついに念願のヴ
ィンス・ロンバルディートロフィーを手にした。
地元サンディエゴ生まれのエースRBテレル・デービスは 157y/30ラッシュ、
3TDランでスーパーボウル記録を達成。すばらしい活躍でMVPの栄誉に輝い
た。
_1Q _2Q _3Q _4Q _ TOTAL
パッカーズ 7 7 3 7 24
ブロンコス 7 10 7 7 31
得点
1Q パッカーズ 10:58 A.フリーマン ( 22 y パス: B.ファーヴ ) GK:R.ロングウェル
ブロンコス 5:39 T.デービス ( 1 y ラン ) GK:J.イーラム
2Q ブロンコス 14:55 J.エルウェイ ( 1 y ラン ) GK:J.イーラム
ブロンコス 12:21 J.イーラム ( 51 y FG )
パッカーズ 0:12 M.チュムラ ( 6 y パス: B.ファーヴ ) GK:R.ロングウェル
3Q パッカーズ 11:59 R.ロングウェル ( 27 y FG )
ブロンコス 0:34 T.デービス ( 1 y ラン ) GK:J.イーラム
4Q パッカーズ 13:32 A.フリーマン ( 13 y パス: B.ファーヴ ) GK:R.ロングウェル
ブロンコス 1:45 T.デービス ( 1 y ラン ) GK:J.イーラム
昨年スーパーボウル制し、今年も十分な力を蓄えて2年連続のスーパーボウル制
覇にやってきたパッカーズに対し、プレーオフにワルドカードから出場し、連戦
でここまでやってきたブロンコスは戦前苦戦が予想されていた。試合はパッカー
ズ優位に進行すると見る人が大半を占めた。
しかし、パッカーズはRBデービスを封じ込められなかった。
これまでブロンコスはスーパーボウル4戦全敗だった。そのうちQBエルウェ
イが3試合を投げた。この試合がエルウェイの最後のスーパーボウルと言われ
ていた。彼はその最後とも言われたこのチャンスで見事にスーパーボウルの栄
冠を勝ち取った。
「今はもう感無量だ。試合を振返ることはできない。そうするにはもう少し時
間がいる。」 (ブロンコス RB T.デービス )
「信じられない。この思いや仲間を大事にしたい。本当にすばらしい。すばら
しいチームだ。このチームが一つになれたことをとても誇りに思っている。困難
な道のりだった。ブロンコスのファンも今までにない気分だろう。ついにここに
到達した。」
(ブロンコス QB J.エルウェイ)
ブロンコスが優勝したことでAFCの 13連敗はついに終焉を迎えた。最後のAF
C優勝は 1984年レイダースがレッドスキンズを 38-9で破った第17回スーパーボ
ウル。この時のレイダースも今年度のブロンコス同様ワイルドカードから勝ち上
がってスーパーボウルを制覇を果たした。
今シーズン、デンバーのオフェンスラインメンはNFLで最も小柄で最軽量だっ
た。300ポンドを超える選手は一人もいない。しかし、この試合でも 345ポンド
の巨漢NTギルバート・ブラウンと 305ポンドのDEレジー・ホワイトが率い
る強力なグリンベイのディフェンシヴラインに対して、たゆむことなく押し込み
RBデービスに走る穴を開け続け、その実力を見せた。
QBエルウェイはRBデービスのランに助けられ 123y(12/22)、2インターセプ
トとやや控えめな投球にとどまった。だが、重要な状況では果敢なランを見せ、
闘志むきだしの気迫の走りでヤードを稼ぎ、TDランをあげるなど、チームの士
気を高め、スーパーボウル制覇への並々ならぬ意気込みを見せた。
一方、パッカーズ3年連続MVPのQBブレット・ファーヴは 256y(25/42)、
3TDパス、1インターセプトとまずまずの成績だった。しかし、序盤にQBエ
ルウェイのTDランで逆転された後は、同点がやっとでチームを再逆転させるこ
とができなかった。WRアントニオ・フリーマンは 126y/9キャッチ。RBドロ
シー・レベンスは 90y/19と大きな爆発とまでは行かなかったがまずまずだった。
「序盤に 17-7とリードされて反撃に苦しんだ。結局、追い上げることに多くの
力を使ってしまって最後まで届かなかった。もはや誰にもデンバーの実力を否定
できない。彼らはすばらしいフットボールゲームをしていた。テレル・デービス
のMVPはもっともだ。彼らはありきたりではない優れたプランで臨んできた。
ジョン・エルウェイには楽しませてもらったが、彼が私に対してあれほどやれる
とは思っていなかった。」 (パッカーズ HC M.ホルムグレン )
「敵は思っていた通りブリッツをかけてきた。それにはとてもうまく対処でき
たので3タッチダウンできた。ミスをしてしまったので敵にやられてしまった。
ターンオーバーで 10点取られてしまった。そこが大きな鍵になったと思う。予
期せぬことに面食らってしまった。敵がブリッツしてきて我々はそのほとんどを
摘み取ったが2回だけミスをしてしまった。」 (パッカーズ QB B.ファーヴ )
試合は終始緊張を保ち、同点の場面が続く緊迫した目の離せない展開となった。
4Q、パッカーズのTDで 24-24の同点となり、試合の行方は分からなくなった
が 3:27残してブロンコスは敵陣 49yから攻撃権を得て、ついに運命を決めるシ
リーズに取り掛かった。
最初のプレイ。1Qに負傷したDEゲイブ・ウィリルキンスに替わって入った
DEダリアス・ホランドにフェイスマスクの反則を誘い 15y前進。1プレイ後、
FBハワード・グリフィスがQBエルウエイからのスウィングパスを左サイドで
キャッチし 23y駆け上がって、敵陣残り 8yにまで進んだ。
2ミニッツウォーニングの後、RBデービスがLEジーマーマンの後ろに突っ込
み 7y前進。しかし、このプレイでTEシャープがホールディングの反則を取ら
れ 10y罰退。だが、次のプレイでもRBデービスが同じプレイで 17y走り、残
り 1y。最後もRBデービスがボールを持ち、中央を楽にぬけて決勝のTDをあ
げた。
パッカーズもその後、自陣 39yからの攻撃を得て、同点に持ち込むチャンスを手
にした。RBレベンスがQBファーヴからのショートパスを受けて走り、22y前
進、敵陣 48yに達し、次もレベンスが 13yパスを取り、残り 1:04で残り 35yと
肉薄した。
しかし、その後 4yパスをRBレベンスが取るが2プレイパス失敗。4thダウン
でも中央のTEチュムラにパスを試みるが、LBジョン・モブリーがこれを阻み、
パッカーズは攻撃権を失って試合終了となった。
「試合の最期にプレイを決めようと思っていた。それしかなかった。プレイが
うまく行けば素晴らしいコールになるのだろう。失敗すればそうではなくなる。
考えられる最高のコールで臨んだが、それを生かせなかった。チャンスだったの
にそこでプレイを決められなかった。」 (パッカーズ QB B.ファーヴ )
「素晴らしいフットボールチームに敗れたのだ。恥じることは何もない。もう
一度立て直して、彼らが我々から奪ったものにまた来年挑戦すればいい。プレイ
オフに勝ち続けると、負けがより辛くなる。彼らのオフェンスはリーグで最高だ。
だから、少なからずボールを走らされることは覚悟していた。最終的に敵がライ
ンで我々よりも多くの得点を挙げたということだ。」
(パッカーズ TE M.チュムラ)
RBデービスは3つのTDランでMVPに輝いたが、彼はこの試合1Q終了間際
に軽い脳震盪を起こし、その後数プレイしたものの2Qはほとんどプレイせず、
前半終了前に早々とロッカールームに下がった。ケガの状態が心配されたが、
後半になって無事復帰。フィールドに戻って、最初のプレイでボールを受けたが、
デービスはこのプレイで激しくタクッルされてボールをファンブル。ターンオー
バーを喫し、そこからグリンベイに 17-17と追いつかれてしまうFGを許すとい
う大きなミスを犯してしまった。しかし、結果的にこのプレイが忍耐強いデヴィ
スの気持ちを引き締め、この後の驚異的なランへの呼び水となった。
この同点FGによって試合は一見、振り出しに戻ったかの様にも見えた。しかし、
ブロンコスの勢いは止まっていなかった。パントを1度づつ蹴りあって、ブロンコ
ス自陣 8yからの攻撃。QBエルウェイはその時点まで 27yしか投げていなかった
怪腕をふるいWRマキャフリーに 36yパスを決めるなど 92yを 13プレイ 7:12
かけて前進。RBデービスのTDランで締めくくって再びリードを奪った。
続くキックオフリターンでもトニー・ウェランドがパッカーズのフリーマンに
ファンブルを誘発させティム・マッカイヤーが敵陣残り 22yでリカバー。ターン
オーバーを奪ってブロンコスは更なるチャンスを得た。QBエルウェイはこの
ビックチャンスに乗じパッカーズに致命的打撃を与えるべく、かさずTDを狙っ
てパス投じた。だが、Sユージーン・ロビンソンはこのプレイを完全に読みエン
ドゾーン内でボールをインターセプト。パッカーズが王者の意地を見せ追加点を
許さなかった。
「敵にもう少しプレッシャーをかけられるチャンスだった。ユージーンはレシ
ーヴァーに競り勝っていいプレイをした。」(ブロンコス HC M.シャナハン)
QBファーヴはこれで得た攻撃権を生かし、パスプレイを中心に4プレイ、CB
ダリアン・ゴードンの 33yパスインターフェアランスにも助けられ 85y前進し、
WRフリーマンに 13yTDパスを決めて残り 1:28で再び同点とし試合を分から
なくさせた。それはまさに王者としての執念と意地のTDであった。
「今週、我々に敬意を払う者はいなかった。彼ら(パッカーズ)は我々がやるよう
なランゲームに直面したことはなかったし、それを構成するクォーターバック(エ
ルウェイ)やマイク・シャナハンのようなコーチとも試合をしたことがなかった。
我々は監督の要求することを守った。マイクは‘己のうぬぼれを口にするな’と
言った。‘話したいのは良く分かる。だが、この2週間はそうすることが大きな
価値となる。沈黙こそが黄金なのだ’と言った。」(ブロンコス TE S.シャープ)
パッカーズの逆転勝利はならなかったが、誰もがパッカーズのこの試合での健闘
をたたえた。2年連続の優勝を逃したパッカーズの戦いに不満をもらすものは誰
一人としていなかった。第32回スーパーボウルは激しい実力チーム同士のまさに
頂点決戦にふさわしい最高の試合であった。
この試合は新たなNFLの伝説の1ページとして永遠に我々の記憶の中にとどま
り、後に語りつがれていくことだろう。
スーパーボウル記録
両チームともが最初の攻撃でタッチダウンをあげたのは史上初。
個人記録
最多TDラン 3TDラン テレル・デービス
最多得点 18点 テレル・デービス
(同 ロジャー・クレイグ、ジェリー・ライス2度、リッキー・ワタース)
最年長得点 37才 ジョン・エルウェイ
通算最多被インターセプト 7 ジョン・エルウェイ
史上2番目に長いFG 51yFG Kジェイソン・イーラム
(1位 54yFG 第28回 ビルズ、スティーヴ・クリスティー)
最多出場 5回 マイク・ローデッシュ (ほか 8名)
チーム記録
最少パントリターン 両チーム計 0
最多TDラン 両チーム計 4 (ほか3試合)
最少サック 両チーム計 1 (第15回)
最多TDラン 4 ブロンコス (第20回)